汚染土壌の土地取引対策

改正 土壌汚染対策法

令和2年4月 環境省は、平成21年改正の土壌汚染対策法(旧法) 附則第15条に基づいて改正. 今回、改正土壌汚染対策法第2段階施行[全面施行].新規物質の追加、調査方法など細部に渡って見直されました.

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・令和3年4月1日施行|土壌の汚染に係る環境基準の見直し及び土壌汚染対策法の特定有害物質の基準の見直に伴う土壌汚染対策法の運用[令和2年環境省令第14号].下記に見直しリストを紹介.
・令和2年4月1日施行|土壌汚染対策法の一部を改正する法律[平成29年法律第33号]

環境意識と社会価値を高める

土地取引に関わる汚染土壌のリスクを危惧している場合は、取引リスクを少しでも軽減するべく手立てをしてから土地活用を考えることが必要です.

最近の土地取引の動向にもあわせた対策が必要となり、土地の「環境意識と社会価値」を高めることが求められます.例えば、買主は、土地取引締結前に「土地の登記履歴調査」を実施して土地の経歴確認をします.そして、売主は、取引事前地の「土壌汚染対策法」に順守した土壌調査を取引準備として行った上で丁寧な説明を行うことが「環境意識と社会価値」を高めます.

当社では、土地売買にまつわる地取引締結前の「土地の登記履歴調査」の相談にお応えしております.初動調査として行うことで、その後の契約リスクと心的リスクを軽減されます.「土地の登記履歴調査」ついては行政書士が、「土壌汚染の環境影響」については環境計量士が、専門的知見から相談を承っております.

土壌汚染リスクの取り扱いに関する最近の動向

2002年7月不動産鑑定評価基準の改正において土壌汚染が保存する場合、「不動産鑑定評価額」に影響をあたえてることが明記.土壌汚染対策法[以下、土対法]に規定されている汚染調査、区域指定、措置等の各手続きに対応して鑑定評価上の対応が示されました.

これは、工場跡地等の再開発に伴って、土壌汚染が明らかになる例が全国で報告されるようになったことによります.こうした土褒汚染は、環境汚染同等と捉え、人が汚染された土壌を直接体内に取り込むことによるリスク、有害物質の溶け込んだ地下水を飲んでしまい健康に影響を与えるおそれがありことを危惧、この二つの視点から汚染によって健康に被害が発生なしいように防止するための措置を定めることにしたのが土対法です.また経済的に円滑な土地取引の妨げになる心理的嫌悪感からくる土地価格形成への影響を考慮した結果でもあります.

最新の土対法は、環境省「土壌対策汚染法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」から確認ください.

土壌汚染された土地取引への対応

Q.土地登記する時に買主がすべきことは?  
土地売買契約を締結する際に土壌汚染が見つかったらどのような問題が発生するのか、どのような対応が必要となるのか考えましょう.取引問題となり得る要件をできるだけ未然に解消しておく必要があります.そのために売主との情報格差が大きい消費者は、取引の事前に専門知識のある機関に相談することが大切です.
Q.売却時に売主がすべきことは? 
契約の締結時は、契約の前提となる土地の利用履歴、周辺の土地の用途、土対法の区域指定の状況、土壌汚染に関する調査結果等を事実について買主に書面で説明責任を行うことが求められます.

土壌汚染された土地の瑕疵担保責任とは

土地の売買契約締結後、土壌汚染が発見された場合、買主は売主に対して、不動産に瑕疵(かし)があったとして、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を行うことができます.瑕疵とは、売買目的物の欠陥ですが、何が瑕疵かは状況により判断され、必ずしも明確ではありません.ここでは、土地取引で想定される瑕疵担保責任について一部を記載しています.

不動産取引時の買主リスク

  1. 瑕疵の判断基準
    契約内容と目的物の性質に照らして判断されること
  2. 隠れた瑕疵
    前提には、買主が、社会通念上期待される通常の注意を払っても発見できないなった欠陥による損失が存在すること
  3. 瑕疵担保貢任の期間
    不動産売買契約書に記載されている瑕疵担保責任期間内であること
  4. 瑕疵担保責任は無過失責任
    売主が負う瑕疵担保責任は無過失責任であること
  5. 瑕疵担保責任免除特約
    不動産売買契約書に記載されている責任免除特約に照らして判断されること

不動産取引時の売主リスク

  1. 土壌汚染対策法違反
    国民の健康を保護することを目的とする法律に違反するとき.【第一条】この法律は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする.
  2. 瑕疵担保責任
    民法上の瑕疵担保責任
  3. 説明義務違反
    民法上の詐欺行為、消費者契約法上の契約取り消し

< 外部リンク|環境省_土壌関係

瑕疵担保責任が問えない取引 石綿

土地取引と石綿

世界の石綿対策の履歴は、1930年から始まり、石綿規制は、1930年代イギリスで多発する石綿肺から始まり、その後1972年WHOが石綿を発がん物質認定.使用範囲は、世界中で使用され現在に至っている.

日本への輸入量は、1930年~2005年の総計980万t.そのピークは1974年 約35万tを記録.国内でも多目的に利用された.その後、規制強化により2006年「輸入ゼロ」となる.

日本は、現在まで半世紀に渡って規制化.1970年代に製造工場の労働環境を規制開始.1980年代は、一般環境大気を規制.1990年代は、建築物解体と除去を行う事業現場を規制.2000年代は、建物内環境を対象に規制.一方、日本には、2006年に海外輸入ゼロまで、長期に渡って広く使用されていた素材であることは認識しておくことが重要.

瑕疵担保責任が問えないの?

石綿は、土壌汚染対策法における「特定有害物質」に該当していないことご存知ですか.この問題点は、土壌取引における「瑕疵担保責任」を問えなくします.過去の裁判は、買主側が敗訴するケースが主.取引時にはかなりの注意が必要です.

石綿建材は、建築部材にも多く使われてきました.「外壁スレート板」は、一般的な石綿含有材として、工場や倉庫で広く使用されました.そのスレート板は、経年劣化に伴い朽ち果てた後に敷地内土壌の上に落ちて、土壌に混じる状況が発生.外見上は、まったく問題なく見えてしまいます.その他、スレート板を敷地内に埋めたままの資材置き場であったり、その置き場周辺でも同様な報告があります.

石綿含有不明の土地取引への対策は、土壌中の「石綿事前調査」を行い、取引契約書に責任所在を明確化して取引していく必要があります.

石綿関連法規

下記の関連法規に基づいて事前調査をお考えください.

土壌汚染されていた土地の相続

相続という身近な話題で、土地の履歴調査しとけば良かったと考える事例を紹介

Q.遺産分割協議で取得した土地が、土壌汚染対されていたことが判明した場合、土地の評価額が下がってしまい、相続税の更生請求をしたい.
A.国税庁「土壌汚染地の評価等の考え方 H16.7.5情報」に該当するのか判断が必要.

Q.遺産分割協議で取得した土地が、土壌汚染対されていた土地であることが判明した場合、他の共同相続人に対して損害の費用を請求できるのか.もとの土地に戻す費用を共同相続人で分割したい.
A.共同相続人間の担保責任[改正民法562条]及び土壌汚染は、品質に関する契約の内容に該当するのか判断が必要.

出典

  • 環境省HPより パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」
  • 特定有害物質リスト|当HP内「土壌汚染特定有害物質リスト」
    表1:特定有害物質の種類ごとに、リスク管理の対象とする暴露経路が定められているリスト
    表2:要措置区域の指定に係る基準(汚染状態に関する基準)及び地下水基準リスト
    表3:第二溶出量基準 土壌溶出量基準に不適合である汚染状態の程度を表す指標